眼瞼下垂・眼瞼内反症
眼科形成手術について
近年眼科の中で眼科形成分野が特に専門的に行われるようになってきています。当院でも眼科形成手術の対応の幅が広くなりました。
痛みの少ないまぶたの手術
- 痛みを和らげる前処置などに配慮した手術の際、麻酔時の痛みがありますので、皮膚に麻酔作用のあるクリームを塗布しておきます。使用する針も最も細い針(32G)を用いています。
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希望により不安を和らげるための対応をしています。不安を和らげ、鎮痛作用のあるガスを使用しています。歯科などで子供の治療に用いられており、副作用が少なく、睡眠作用は弱いものです。
手術に対する不安が強い場合、鎮痛作用と睡眠作用のある薬剤を使用することも可能です。
眼瞼下垂
(まぶたが下がる病気)
瞼が下がり挙げにくいという病気です。先天性(幼少の頃から)の場合と年齢と共に生じる場合があります。麻痺性や自己免疫疾患の重症筋無力症などでも眼瞼下垂はおきます。下垂の原因により治療は違いますので、眼科での治療がおすすめです。
原因
- 先天性眼瞼下垂
先天性(生まれつき)瞼を挙げる筋肉のつくりが不良で、幼少の頃より瞼をあげにくい場合が先天性眼瞼下垂です。 - 加齢に伴う眼瞼下垂
成人してから加齢により瞼を挙げる筋肉(眼瞼挙筋)の付着部(腱膜部)がのびて瞼を上げにくくなっている場合が多く高齢者で多く見られます。 - 皮膚弛緩による眼瞼下垂
加齢により皮膚がたるむことで視界を妨げる場合(皮膚弛緩)もあります。高齢の方で多く見られますが、30~40代でも一重で上眼瞼が厚ぼったい方では、皮膚の軽度の弛緩が、視界を妨げ、常に眉毛を挙上し眼周囲の疲れを訴えるケースも見られます。 - 麻痺性(動眼神経麻痺やホルネル症候群など神経の麻痺)や自己免疫疾患である重症筋無力症、眼瞼痙攣などで眼瞼下垂が生じる場合があります。
治療
先天性眼瞼下垂
生まれつき眼瞼挙筋が形成不全で、瞼が上げにくい状態です。18歳以上の局所麻酔が可能な年齢では、額の前頭筋を利用するつり上げ手術が可能です。日帰りで片眼40分程度の所要時間です。
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右目術前
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右目術後
加齢に伴う眼瞼下垂
加齢やコンタクトが原因で下垂が強い場合、眼瞼挙筋に対する手術が必要です。眼瞼挙筋の付着部を付け替える手術で、皮膚弛緩もあれば合わせて切除します。両眼で約1時間程度です。術中に仮縫いをし、左右のバランスの確認をします。
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ハードコンタクト長期装用による
眼瞼下垂:術前 -
ハードコンタクト長期装用による
眼瞼下垂:術後
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術前
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術後
皮膚弛緩による眼瞼下垂
皮膚の弛みにより視界を妨げている場合も眼瞼下垂手術の対象になります。
高齢で皮膚がたるむ場合と、上眼瞼が厚ぼったい皮膚弛緩の方(若年者でも見られます)でみられます。皮膚切除と重瞼をしっかり作成します。両眼で約1時間程度です。
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術前
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術後1週間後
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術後2ヵ月後
眉毛下切除の方のみ
目じり側の皮膚の弛みが強い眼瞼下垂の場合、眉毛下皮膚切除の手術が必要です。両眼で約1時間程度です。
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両眼術前
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両眼術後
眉毛下切除+挙筋前転術
目じりの皮膚のたるみが強く瞼を上げる機能(挙筋作用)が弱い方は眉毛下切除を先に行い、その約3週間後に挙筋前転術を行います。
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両眼術前
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両眼眉毛下切除術後1週間
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両眼眉毛下+挙筋前転術後6か月
眼瞼内反症・睫毛内反症・睫毛乱生(逆さまつ毛)
眼瞼内反症とは、眼瞼(まぶたが内向きとなる状態で睫毛が眼球に触り、角膜(黒目)を傷つける病気です。先天性(幼児期から)と加齢に伴い生じる眼瞼内反症があります。睫毛乱生症とは一部の睫毛が眼球側を向いているもので、高齢者にみられます。
先天性内反症・多くは睫毛内反症(子どもの逆さまつ毛)
原因
生まれつき皮膚の弛みが強く、眼瞼(まぶた)が内に向いているものです。眼瞼の内反の程度は軽いのに、皮膚や皮下脂肪が過剰で皮膚側が盛り上がり、睫毛が内に向いて黒目に傷をつける場合を睫毛内反と言います。
睫毛内反とは
睫毛が眼球のほうを向いていて、眼球表面の粘膜を傷つけるため、まぶしい、ごろつく、流涙などの症状をおこします。
治療
成長するにつれて治ることもありますが、症状が強ければ2歳頃に手術をします。多くの場合、小学生~高校生頃に手術をすることが多いようです。両眼上下に糸かけ術をする場合40分~50分程度で行います。糸かけで再発したり、睫毛の内反の程度が強い場合、皮膚を切除するホッツ法を行います。
(小学生、中学生までは全身麻酔で、高校生から局所麻酔で行っています)
※当院では全身麻酔手術は行っておりません
目頭の皮膚がかぶさっている場合、目頭側の睫毛内反の改善のために内嘴切開(目頭切開)を睫毛内反手術(皮膚切開法)と同時に行うと改善効果もよく目元がはっきりして美容的にも良好となります。
加齢に伴い生じる眼瞼内反症
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両下眼瞼内反術前
矢印の所の睫毛が目に当たっています。 -
右下眼瞼内反(糸かけ)術後 2か月後
左下眼瞼内反(皮膚切開)術後 2か月後
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右下眼瞼内反(糸かけ)術前
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右下眼瞼内反(糸かけ)術後
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左下眼瞼内反(皮膚切開法)術前
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左下眼瞼内反(皮膚切開法)術後
原因
瞼の皮膚の弛みや皮下の筋力の低下が、眼瞼を支えている組織(下眼瞼牽引筋膜)のゆるみで、眼瞼ごと内に向いてしまうものです。
治療
まつげを抜き続けてもいいのですが、痛み・充血を繰り返す場合、手術が必要です。糸かけ術(埋没法)は短時間ででき、多くの方に効果があります。中には糸かけ術で再発する方があり、また、内反の程度が強い方では、皮膚の少量の切除と緩んだ腱膜に対し下眼瞼の靭帯を熱凝固で短縮し、また眼輪筋縫宿する手術を行っています。
睫毛乱生
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右下眼瞼睫毛乱生 術前
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糸かけ手術+睫毛根切除後
睫毛の睫毛根部の炎症が原因である場合が多く、一部の睫毛が眼球側を向いて生えている状態です。黒目に睫毛が触るので異物感(ゴロツキ、チカチカ)が出たり、視力障害がみられることもあります。
治療
局所麻酔下に方向を間違えている睫毛根をすべて切除しています。片眼約20分~30分程度です。睫毛根電気分解より完治率が高い手術です。