近視進行防止の治療
近視進行防止の治療について
世界的に近視は増加しており、特に近視の若年化が問題になっています。将来的には、2050年に世界の子供の近視は約40%になると予測されています。発症率は8歳前後が最も高く、3~8歳の近視が非常に増えています。
そこで、低年齢からの「早期の近視予防の重要性」が必要となっています。
若年近視の
リスク・原因について
近視の若年化と重症化は世界的に大きな問題となっています。若い時期に発症した近視は進行しやすく、特に**強度近視(-6D以上、眼軸28mm以上)**になると、将来的に眼の病気を発症するリスクが高まることが知られています。
近視は眼軸(目の奥行き)が伸びることで進行します。成長期は身長が伸びるのと同じように眼軸も伸びやすく、特に小学生の時期は伸びる割合が大きいため、近視が進行しやすい時期といわれています。そのため、若年期の近視は強度近視への移行を防ぐ目的で、近視抑制治療が推奨されています。
近視の発症には遺伝的要因に加え、環境要因も大きく関わります。近くを見る作業の増加、屋外活動の減少、デジタルデバイスの長時間使用などが近視進行に影響すると報告されています。
このため、日常生活での工夫による近視進行予防と、日本近視学会が示す近視抑制治療の選択が重要になります。あわせて、当院で行っている近視治療についても説明していきます。
-
正常な眼軸の長さであれば目の奥にきれいな映像としてとらえられます。
-
眼軸の長くなった近視の目であれば目の奥にぼやけた映像をとらえられます。
近視治療が特に必要なケース
以下のような場合は、近視抑制治療が特に必要です。
- 低年齢での発症(9歳以下)
- 年間-0.5D以上近視が進んでいる場合
- 両親が中等度から高度の近視の場合
- 年齢を問わず初診時の近視が中等度以上の近視(-3.0D以上の近視)
- 眼軸長が26mm以上の近視
近視進行を防ぐ生活習慣
屋外で日光を浴びる習慣をつける
屋外での活動は、最低でも40分、できれば2時間ほど日光を浴びることが近視進行の抑制につながることがわかっています。日常的に外で体を動かす時間を確保することが大切です。
近くを見るときは距離・休憩・時間を意識
読書や勉強、ゲームなどの近業作業を行う際は、目と対象物の距離を30cm以上離し、30分に1回は遠くを見るようにして、連続して長時間続けないようにしましょう。
また、自宅での近業作業はトータル時間を制限することが推奨されています。当院では、小学生は平日2時間・休日3時間、中学生は3〜5時間、高校生は4〜5時間を推奨しています。
正しい姿勢を保つ
寝転んで本を読んだり、ゲームやテレビを見ることは避け、背筋を伸ばして正しい姿勢で作業することが大切です。姿勢が崩れると目と対象物の距離が近くなりやすく、近視進行のリスクが高まります。
近視進行防止の治療
低濃度アトロピン点眼
小児の斜視や弱視治療でも使用されるアトロピンには、近視進行を抑制する効果があることが分かっています。
シンガポールの研究では、0.01%アトロピン点眼で約60%の抑制効果が示され、点眼中止後のリバウンドも少ないと報告されています。
進行が続く場合は、より濃度の高い0.025%点眼を使用することも可能です。
対象年齢5〜15歳
副作用まぶしさ、近くが見えにくいなど
0.01%マイオピン
0.01%低濃度アトロピン点眼で輸入品です。
0.025%のものより散瞳しにくく、羞明の副作用も少ないです。また、オルソケラトロジーや多焦点ソフトコンタクトレンズと0.01%の低濃度アトロピンとの併用でも近視抑制効果は高まります。
-
- 0.01%マイオピン※5,840円(1本1カ月分診察料含む。但し初診時、初診料約5千円の追加あり)
- オルソケラトロジーや多焦点ソフトコンタクトレンズと0.01%の低濃度アトロピンとの併用の場合
0.01%マイオピン※4400円(1本1カ月分点眼料のみ)
リジュセアミニ点眼液 0.025%
リジュセアミニ点眼液0.025%は、0.025%の低濃度アトロピン点眼です。日本で初めて承認された、近視進行抑制点眼剤になります。リジュセアミニ点眼液0.025%の製剤設計コンセプトにより散瞳に関連する目の前方からの移行性を抑制することで、散瞳リスクの軽減を図っています。目の後方への移行性を高め、近視進行抑制の有効性の向上を図っています。長期投与されることから、安全性を考慮し、防腐剤フリーの製剤に設計されています。
-
- 0.025%リジュセアミニ※
5,560円(30本1ヶ月分診察料含む。但し初診時、初診料約5千円の追加あり) - オルソケラトロジーや多焦点ソフトコンタクトレンズと0.025%の低濃度アトロピンとの併用の場合
0.025%リジュセアミニ※
4,120円(30本1ヶ月分点眼料のみ)
- 0.025%リジュセアミニ※
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは、カーブの弱いハードコンタクトレンズを睡眠時に装用して一時的に角膜の形状を平らにし、良好な裸眼視力を得ようとする屈折矯正法です。
レンズを外しても一定の時間その形状が続くので、日中は裸眼で過ごすといったことが可能になります。しかし圧迫できる角膜上皮の厚みには限界があり、矯正量は-4D~-6D程度、乱視は-1.5Dまでとされています。
さらに強い近視の方でも足りない分を眼鏡で補正しながらオルソケラトロジーを使用することは近視抑制効果があることはわかっています。低濃度アトロピンよりオルソケラトロジーは近視抑制効果に個人差、ばらつきが少ないことより、小学生の近視抑制手段として全国的に増加しています。欠点としては自由診療のため、費用が高い、適切な管理を怠ると角膜感染症などの重篤な合併症を起こすこともあります。常に大人の管理の下で使用することが大切です。
対象年齢6歳以上
オルソケラトロジーの治療スケジュール
シードとメニコンのオルソレンズを使用しており、シードは定額制、メニコンは2年間のレンズ使用料と、1年間の検査料込みの一括支払いとなっており、両社で治療スケジュールは少し異なります。
シード国産のオルソレンズ 軽く曲げても割れず、ややカーブがなだらかで、日本人の目に適合しやすいといわれています。
-
- 定額制で毎月9,500円
1年で2回まで度数や破損でも保証があります。翌年はリセットされ、同様の保証があります。
- 定額制で毎月9,500円
メニコン(オルソKと乱視矯正用のオルソKCA)シードに比べレンズはやや硬めですが、角膜に接するカーブを変えることができることと、乱視矯正のCAシリーズもあるため、目の形態が非対称だったり、非常に角膜(黒目)形が特殊な場合、適合できる可能性がたまります。
-
- 2年間の使用料で145,000円
3ヶ月までは度数変更、破損の保証ありますが、その後1年間は破損のみの保証になり、1年以降の3ヶ月ごとの検査料が3,300円必要です。
- 2年間の使用料で145,000円
メニコンのオルソレンズは固めで、度数が変わることが少ないようです。どちらのオルソレンズもお手入れ用品の値段が別途かかり、トータルでは、どちらも同程度の費用になるようです。
多焦点コンタクトレンズ
多焦点ソフトコンタクトレンズは、近見の加入度数が付加された遠近両用コンタクトレンズとして知られています。
海外で多焦点ソフトコンタクトレンズを子供の近視抑制のために開発しており、オルソケラトロジーに匹敵する有効性が示され始めています。使い捨てコンタクトであれば、衛生面での管理が比較的容易なことから、国によっては、子供の近視抑制のために使用される頻度は、低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジーを凌いでいるようです。
対象年齢小学5~6年生(自分で着脱できること)
1Dayのソフトコンタクトレンズ SEED EDOF (low, middle)
-0D~-12D
1箱(約1か月分)3,400円
屈折抑制効果 約50%
1Dayのソフトコンタクトレンズ MiSight®(CooperVision)
-0.25~-10.0D
1箱(約1か月分)7,000円
屈折抑制効果 約69%
近視抑制治療用の多焦点コンタクトともに認可されているものです。
当院では2026年5~7月に取り扱い予定です。
2week交換ソフトコンタクトレンズ メニコンDuo
-2D~6D(注文すれば-10Dまで)
1箱(約3か月分)2,400円
屈折抑制効果 約30%
クーパービジョン バイオフィニティー マルチフォーカル(+1.0D加入)
-2D~-8D
1箱(約3か月分)3,360円
屈折抑制効果 約40%
1か月タイプのソフト エアオプティクスExアクア
0D~-10D
1箱(3か月分)3,920円
近視抑制効果不明 軽度あり
特殊眼鏡
海外では、周辺部の網膜の手前でピントが合う光をたくさん作用させたり、周辺部の網膜のコントラストを下げることで、近視抑制をしようとする眼鏡が販売されており、効果があることがわかってきています。
DIMS(MIYOSMART®) HOYA社
周辺部には+3.50Dの小さなレンズを多数配置したDIMSという技術で作られており、網膜周辺に“焦点が手前にくるゾーン”をつくることで眼軸が伸びにくい環境を整える仕組みです。
対象:5歳~18歳
対象度数:0D~-10.0D
円柱度数:-4.0D以下
メリット:感染症などのリスクがない、リバウンドがない
屈折進行抑制 52%
眼軸伸長抑制 62%
HALT(Stellest ®) Essilor社
高度な非球面性を有する小型レンズが,中央の単焦点ゾーンを取り囲むように同心円状に連続して埋め込まれており網膜周辺に“焦点が手前にくるゾーン”をつくることで眼軸が伸びにくい環境を整える仕組みです。
対象:7歳~18歳
対象度数:+2D~-12.0D
円柱度数:-4.0D以下
メリット:感染症などのリスクがない、リバウンドがない
屈折進行抑制 67%
-
眼鏡処方箋を作成する際には、以下の点に留意する必要があるとされています。
- 調節麻痺下屈折検査による完全矯正度数で処方すること
(点眼を用いて調節を一時的に麻痺させ、正確なお子さまの屈折状態に合わせた度数を決定する必要があります) - 適応外となるケースがあること
弱視・斜視・眼振がある場合には、近視抑制用眼鏡は適していないとされています。 - レンズ中央のクリアゾーンに瞳孔が一致するよう、フィッティングに十分注意すること
適切な位置に合わせることで、レンズの効果を最大限に発揮できます。
DIMSが2026年中に当院でも取り扱い可能予定です。
- 調節麻痺下屈折検査による完全矯正度数で処方すること
レッドライト療法
近年強い関心を集めているのがレッドライト療法(red light therapy)と呼ばれる治療法です。2014年中国で偶発的に長波長の650nmの波長の赤色光が、過剰な眼軸延長を抑制することが発見されました。
※R8年度には当院で導入予定です。
使用方法1日3分を1日2回、週5回、可視光である650nmの赤色光をのぞき込む。
(眼軸抑制効果 77%(77%治療を守れた場合) 21.6%で0.05㎜眼軸短縮効果がわっています。強度近視の治療としても非常に期待が高まっています。)
使用できないケース眼底に病気がある、網膜疾患、未熟児網膜症、網膜剥離後、若年黄斑変性症など
(低濃度アトロピン点眼との併用はできませんが、オルソケラトロジーとの併用は可能です。)
将来の目を守るための
治療選択
お子様の状況により、近視抑制治療を選び、治療必要性があるようであれば、将来的な眼疾患のリスクを軽減するため近視抑制治療は必要だと思います。当院では、毎回の屈折検査(近視の度数が進んでいないか)、6か月ごとの眼軸超の測定を行っています。

